30年を経て3S理論から3S理論へ
プロゴルフ協会に入会してから30年が経ちました。自分の歩んできたレッスン活動をまとめるため、またその足跡が何かの役に立てばと思い。このサイトを立ち上げました。
なるべくつまらないおじいさんの回顧録とならないようにするつもりですが、それっぽくなていたらお許しください。なんせおじいさんですから...
ゴルフレッスン 黎明期 ー 何もわからないところからのスタート
私は大学卒業後、学生時代からお世話になっていた国分寺ゴルフセンターというところでレッスンを始めました。人にゴルフを教えることの難しさにいきなり直面しました。自分の練習テーマについてのことを言うしか方法がありませんでした。
毎週発売されるゴルフ週刊誌3誌(パーゴルフ、アサヒゴルフ、ゴルフダイジェスト)を読んでレッスンネタとしたこともありました。
習いに来ていただいたお客様を上手くしてあげたい、そのお手伝いがしたいという一念だけでした。何言ってるのかわからないようなレッスンだったかもしれません。(ごめんなさい...)
これはというレッスン書を読みあさりました。少しづつ引き出しができてきましたがレッスン書も言っていることがそれぞれでした。(何が共通のことで何が個別のことか読み取る能力がありませんでした)
Golf Professionalとしてのスタート
そんな時出会ったプロがチャック・キャンベルプロでした。
チャック・キャンベルプロからはゴルフに関してありとあらゆることを習いました。
ゴルフスイングのこと、修理のこと、コース管理のこと...と言いたいところですが、実は思い出せません。
はっきり覚えていることは
★ ゴルフを好きになりなさい
★ 3S(Simple・Slow・Swing)
★ プロゴルファーとゴルフプロフェッショナルの違い
この3つのことだけです。
簡単に、ゆっくり、振る こんなに難しいことはありませんでした。
しかし彼はもう一つ私に与えてくれました。
それがこんなクラブです。
キャンベルプロと多摩ヒルズCCでよく練習していたある日、私が木の根元にあったボールを打ってネックを曲げてしまったことがありました。
彼は私のクラブのシャフトの真ん中あたりを松の木に当てがいグッと力を入れ曲げました。
これを振ってみろと言いました。
私は言われた通り何回か素振りをしてみました。
えっ!
クラブは振るとこんな力が働くんだよ...
チャックキャンベルプロが書いた3Sゴルフ理論です。
何回も何回も読みました。
右にあるのはパーゴルフの付録です。
二冊とも私にとってはゴルフの名著の一つだと思っています。
チャックさんは私が知る限りシャフトの曲がったクラブの話を実際のレッスンや著書に登場させることはありませんでした。
私が偶然にも3つのSに辿り着いたのは、チャックキャンベルプロの3Sゴルフ理論がスタートでした。
途中いろいろな人、いろいろな本に出会い30年たった今、私の3Sゴルフ理論としてまとめることができました。
しかしチャックさんが私にくれたシャフトの曲がったクラブ(後になってクラブLと命名しました)がなかったら私は3Sに辿り着けなかったかもしれません。
何はともあれ私はチャックキャンベルというプロとの出会いによってゴルフプロフェショナルとして歩んでいく決意ができました。
その頃とても影響を受けた本
★ モダン・ゴルフ ベンホーガン
言わずと知れたベンホーガンのモダンゴルフです。古いゴルファーはみなこれを読んだことでしょう。
米国ではFive Lessonsとしてほとんどのゴルフショップに置いてあります。
以降のレッスン書を見ても米国ではこのベンホーガンのFive Lessonsがバイブルのような感じがします。
ベンホーガンのモダンゴルフと言ったらこの二つの概念が私の中には強烈に入ってきました。「スイングプレーン」と「左手のスーピネーション」です。
私は一番左にあるバックスイングとダウンスイングの面の違いは最初は採用しませんでした。スイング面の概念についてはその後いろいろな概念が出てきました。しかし私はこの概念でのスイングプレーンを取り入れたいと考えています。(注)1
他のスイングプレーンの考え方はオンプレーンさせる対象が腕、シャフトであると読めます。
私はオンプレーンさせるのはフェースだと思っています。(またはクラブLで感じた振った時に発生するクラブの重さを隠す面、これがスイングプレーンだと考えるのが合理的だと考えます)
注1:キネティックチェーンをスイングの根幹にあるパワーフローと考えると「切り返し動作」が説明でき、その考えをクラブの動きに発展させるとバックスイングとダウンスイングの二つのスイングプレーンの考えは」容易に理解できます。現代の最新スイングと称してシャローイング、GGスイングなど一世を風靡していますがアナライザーもないこの時代からこのような概念が既にありました。(いまさらながらベンホーガンモダンゴルフすごい!しかし指導者がこれを深く突っ込んで学ばなかった。私を含め・・・)
★ パーフェクト・ゴルフ ジョン・ジェイコブス著
ジョン・ジェイコブスというプロの書いたパーフェクト・ゴルフ(1974年)という本があります。
水谷準という方の訳です。この方はベンホーガンのモダンゴルフの翻訳家でもあります。
内容の詳細もそうですが、この本に書いてある冒頭の部分
まず何をやろうとしているのか理解しろ。それはクラブフェースの動きである。
そして
何よりもスイングしろ。動作を分解して細切れにするな!
ということ、これが私の3Sゴルフ理論の方向性となりました。
* クラブフェースの動かし方を目的とする。
* そしてスイングはその目的を達成するための手段である。
* さらにスイングは一枚一枚の静止画をパラパラアニメにしたものではない。
★ 完全なるゴルファー ボブ・トスキ&ジム・フリック
この本は私にとても多くの事を教えてくれました。
ボブ・トスキというプレーヤーが書いたレッスン書だったら私は他の本(プレーヤーの書いた方法論的な書籍は本棚一つが埋まるほど読みました)と同様処分しましたが、この本はまだ本棚にあります。
ゴルフプレイヤーとゴルフ教師ともいうべき人との共著で内容として目的と手段がとても明確に述べられています。以降NGFという存在を知りそこでいろいろ勉強させてもらったことにもつながりました。
★ 飛ばす ゴルフクラブは魔法の杖 高橋琢二著
この本を読んだ方はいますか?
不思議な本です。
昭和60年頃の本ですから余計です。著者は物理学者のようです。
ゴルフクラブの機能的な構造に着目してその動かし方へ言及しています。
数式が出てきて理工系の私でも一つ一つ紙に書きながら読んだものでした。
L字型道具の動きの特徴を解析し、人それぞれの振りやすいクラブが重心設計に関係しているという話は30年後の今のクラブフィッティングそのものです。
★ その他 大変参考になった本
2016年今になっても陳腐化していない情報源となりうる本をいくつか列記しておきます。指導者はじめゴルフにかかわる方でしたら読んでみるといい本です。
・The search for the perfect swing
これもゴルフレッスンにおいては原典といってもいいかもしれません。
英国ゴルフ協会のゴルフにおける研究成果です。
特にボールの弾道法則はレッスンするときの基準となるものさしです。
大変ありがたいことに和訳本が出ています。
・PGA Teaching Manual
米国PGAが発行しているティーチングマニアルです。これも翻訳本が出ています。
レッスンにかかわる方は手元において置くべき著書です。
スイングの事、クラブの事、トレーニングの事、歴史、用具・・・
全ての事が書いてあります。
ゴルフスイング書庫には青木功プロのスイングもあります。
・NGF(米国ゴルフ財団)
私のゴルフの師がかかわっていたこともあり、NGFの保有しているゴルフ指導にかかわるノウハウを勉強したことは大変役に立っています。
後に集団指導のための教材制作にも役立ちました。
何を伝えるか? vs どう伝えるか?
この時期までに読んだ本、雑誌から得た情報の大半は何を伝えるかの何をにあたる部分でした。その何をの独自性と正当性を訴えるものばかりでした。
そしてそれはそれぞれでした。
何が正しいのか判断できませんでした。
ですから全部やってみました。
ショットが改善されたものもありました。
すごくいいヒントになったものもありました。
全然ダメなものもありました。
体を痛めたものもありました。
こんな状態のゴルファー多いと思います。
* いろいろなレッスンプロに習ったことがある方もこんな経験があるかもしれません
こんな悩みは音によって解決しました。
インパクトの音です。
バンカーの上手い人は皆インパクトの音が一緒です。
パッティングの上手い人のインパクトの音は皆一緒です。
フェアウェーから打つアイアンのインパクトの音は皆一緒です。
* ショートアイアン、ミドルアイアン、ロングアイアンはそれぞれ違いますが上手い人のそれは皆一緒です。
どうするとその音がするのか試行錯誤しました。
なかなかできませんでした。
* そりゃそうですよね。どうすればいいのか情報がないのですから。とにかくその音がするまで球をたくさん打ってみることしか方法がないわけです。
ところがひょんなことからバンカーショットの音を出せることができました。
チャックさんとラウンドしていた時のこと。彼のバンカーショットの跡をレーキでならす前にスタンス足跡に自分が入ってみてピンに構えてみました。インパクトの砂の削り取られた跡も目の前にあったので容易にどう動いたのか想像ができました。
早速そのように構えて想像したスイングをしてみたらあの音がしました。何回やってもあの音がします。
今でもその音がするといいバンカーショットができています。でも今はチャックさんの方法とは違った方法でそれを実現しています。
インパクトの音はそれから時間がたっても同じでした。2005年ワシントンDCでのプレジデントカップの観戦ツアーのアテンドの仕事がありタイガーはじめミケルソン等を4日間見ることができました。想像を絶する球筋でしたがインパクトの音は同じでした。
*ドライバーのインパクト音は何人か(クロスバンカーをキャリーで越えていくプレイヤー)は別な音がしました。
私は確信しました。
何を伝えるのかという何をはインパクトに起こっている事実であると。
それをどう伝えればいいのか。それが私の命題になっていきました。チャックさんの足跡に入ってみるということもバンカーショットをマスターするための伝え方の一つだとは思いますが、それもたまたま私がチャックさんの手段からヒントを得られただけであったのかもしれません。
しかし伝達方法の一つであることには変わりません。
伝達方法の確立はゴルフレッスンの確立期の中核の命題と言っても過言ではありませんでした。
ゴルフレッスン 確立期 ー 伝わらないのは教えていないのと同じ
世間がバブルに突入する1987年頃、西武百貨店スポーツレジャー事業部で企画事業化されたゴルフスクール事業に参画しました。
それはサンディエゴゴルフアカデミーとのジョイントベンチャーでゴルフスクール用の教材を共同で作り店舗内のゴルフ売り場でゴルフスクールを展開するというものでした。
テキストとレーザーディスク(1課15分)これを80課作りました。
クラブメカニクス(クラブの使い方) 24課
スイングメカニクス(スイングの仕方) 24課
ショットメカニクス(球筋について) 16課
ゲームメカニクス(ゲームの仕方) 16課
今からすれば超大作です。マニアルを作りインストラクターを養成しました。
私にとって教え方を教えるという経験はとても貴重なものでした。「伝える」ということを教える必要がありました。
これを機に
「伝える内容」より伝えるにはどうしたらよいか?
どんな方法が有効か?
人それぞれにどう対応したらよいか?
こんなことが私の課題となりました。
この事業でAJボナーというプロに出会いました。私が驚いたことは、私がクラブLを振って感じたことが技術の根幹にあるということと同じことを彼は提唱しているということでした。
彼はクラブフェースを野球のバットでホームランを打つように使うというものでした。
これです!
クラブフェースの代わりに野球のバットがついています。
金色したバット(フェース)はホームランを打つように使うということです。
シャフトを振ってると金色のバットはバントの動きしかしません。
シャフトは回転しながら移動する(スイングする)という動きをします。
先のゴルフクラブは魔法の杖の著者やクラブLを私に提示してくれたチャックさんと表現の仕方こそ違いますが同じ内容です。
AJボナーは私より10歳上のプロですが伝達の仕方が素晴らしい!
とても素晴らしいパフォーマンスをします。
まさにエンタティメントです。
そして彼とはこの先ZEVOというフィッティングメーカーでも一緒に仕事をすることになります。
ゴルフレッスン Coaching1 ーゴルフスイングー
私のゴルフレッスンは
- クラブを振った時働く力をクラブの構造から説明して理解していただき(わかる)
- クラブLを素振りしてその働く力を感じていただき(知る)
- クラブLで実際にボールを打って、うまく打てた時の感じを観察する(できる)
このようなステップを踏んで、実際自分がどう体の動きをしたかを発見していくというプロセスをとります。
このようなレッスン方法に辿り着くまでに、Teachingに当たる部分は80課の教材でテキストに残すことができました。
それをどうやって個人差のあるゴルファーにできるようしてさしあげるか、つまりうまく伝えられるかというCoachingについて工夫する必要がありました。
個人差=人それぞれ
今まで会った優れたCoach(私がそう感じた)には共通したいくつかの能力があります。
まず見る眼です。
生徒のスイング、生徒の心・・・短期間に正確にそれらを見抜きます。見事なほどです。
次に個人差=人それぞれを把握してどう伝達していくか。その伝達能力です。
Coachとしての見る眼
富山県魚津市にある(株)スギノマシンという会社がウェートシフトのアナライザーを開発しました。
今ではスイングカタリストなど床反力測定のアナライザーがありますがこの時代にスイングの力の流れを解明する大変優秀なアナライザーが世に出現しました。
まだMSDOS 3.3Bの時代です。
これを使ったCoaching法を開発するお手伝いをさせていただきました。ここで得た経験は私にとっては人の動きをみる視点としての根幹になりました。
右の写真にあるように前後、左右、上下の加重中心の変化量と変移距離を時間経過で記録するものです。
左右の体重秤の上に乗ってスイングしその変化量を計測するアナライザーはありましたが、独自のフォースプレート(床反力計)で変化量と変移距離を同時に測るものはありませんでした。
野球とゴルフ両方のスイングを測定しました。私は富山に出向き何発も球を打って開発者の方にも伺いながらデータのグラフの山を作るにはどんな動作か、谷を作るにはどんな動作か確かめることが出来ました。
ここで得た知識。
つまりパワーのフロー(力の流れ)がスイングを見る視点となりました。
Coachの伝達能力とは
指導をするとき当然言葉を使います。しかし言葉が通じなかったらどうでしょうか?
そんな経験をしました。
サンディエゴにいた時、ゴルフアカデミーでの授業でMethod of Teachingというのがありました。
近隣の練習場で初めてお会いするアマチュアゴルファーに対して、一回限り、15分間という条件でレッスンをする。という内容です。
私はそんなに英語はできませんでした。
年配のゴルファーでHDP20と言っていました。
From here to here.(インパクト直前からインパクト後のクラブの動き)
これをやって見せ
↓
生徒さんのシャフトを持ってそのように動かして感じさせ
↓
最後に自分がどう動かした感じがしたかを聞きました。
↓
今感じたことだけを頭に思い浮かべてボールを打ってみてください。
結果は?
必ずできるはずと思っていましたが成功率30%といったところでした。少しショック!
受け手の抵抗
これに気づいてから私の伝達能力は少し向上したと思いました。
受け手の抵抗とはズバリ!
知識です。
先の例で言うと、その方が
「スイング中のフェースの開閉は方向性を損なう」
という知識があったとするとその知識がやろうとすることにブレーキをかけます。
そこで私は指導する前にその方の
- ゴルフ歴
- レッスンを受けたかどうか
- 上達の経歴
について念入りに伺い、その方がどういう知識を持ってどう意識しているかを把握してからコーチングしていきます。
伝わるかどうかはコーチと生徒のコミュニケーションにつきます。そのためには同じ言葉(ゴルフ言葉)を共有することが大切となります。
ゴルフレッスン Coaching2 -クラブフィッティングー
先に西武百貨店のゴルフスクールFC事業で教材作りで関わったAJボナーというプロと再びクラブフィッティングメーカーの事業で一緒に仕事することになりました。
それがZEVOというフィッティングメーカーです。
私はZEVOが作ったフィッティングキットの使い方とクラブフィッティングの方法をフィッター候補の方に教える業務でした。
現地サンディエゴで研修を受けました。
今まで持っていたクラブに関しての知識が整理できたことはもちろん、新たに得た知識としてクラブがプレイヤーのスイングに与える影響はレッスンするうえで大変大切なことであると改めて認識しました。
ZEVOのフィッティングはまず自分に合った角度を持つクラブを選択することから始めます。
角度とは
- ライ角度
- フェース角度
- ロフト
の3つです。今では当たり前になった可変式のホーゼルが写真にあるように15年前に開発されました。
そして最適角度が見つかった後は自分に合った強さのクラブを見つけていくという二段階のフィッティングが行われます。
自分にとって強めのクラブを使えばボールは右目へ低く飛んでいきます。逆にちょっと弱めのクラブを使うとボールは左目に高めに飛んでいきます。
強さを決めるパラメーターはたくさんあります。それを組み合わせて最適な強さのクラブを作るというメーカーでした。
今でもとても参考になることがありますし、なんといっても自分に合ったクラブを使う大切さは明確になりました。
今フィッティングスタジオZEROという施設でゴルフフィッティングというプログラムをご提供させていただいてます。自分にとって振りやすいクラブを発見するというものですが人それぞれの体の使い方、持っている知識、動作(スイング)の意識をベースにこちらで作成した試打クラブを打っていただき振りやすさの感覚をフィッターと私と2名で伺いながらチョイするという面白いプログラムです。ご興味ある方はぜひご連絡ください。